「女の子なんてすぐ結婚するから、勉強しなくていいのよ」「死ぬほど唐揚げを食べたい」「大人になったら、メークしないとだらしがないと言われるらしい」。女の子が日々、直面する生きづらさを表現した演劇「見えない女子の悩み」で、豊島区の都立千早高校演劇部が28日、福岡県で開かれる全国大会に初出場する。当たり前になっていても見過ごしてはいけない、ジェンダー格差を突きつける。 (中村真暁)
十八日、同校体育館の真ん中で、マスクを付けた女子生徒たちがイスに座っていた。男性教師が教室で、保健体育の授業をするシーンを練習するためだ。
教師役から教わるのは妊娠と中絶、コンドームの使い方、陣痛、産後うつ、不妊治療、望まない妊娠−。女子生徒役が「女だけが苦労するような話ばかり」と嘆くと、別の生徒役が「男子が聞いていないのはなぜだろう」とつぶやいた。
昨年九月四日から翌朝の千早高校が舞台。表現するのは、まさに等身大の自分たちだ。
「女の子ってなんて面倒なんだろう。男に生まれたかったなって、考えることもあって」と話すのは、原案者の森岡水蓮さん(17)。生徒の八割が女子の同校で、共感を呼べると考えた。自身も女友達との関係や、周囲から求められる「女らしさ」に悩んだ経験がある。「女の子って制限が多い。あぐらをかいたら注意され、痴漢されると私たちが悪いみたいに言われる。理不尽だなと思う」
部員は一、二年の女子十人と男子一人。台本はなく、自分たちの体験を言葉に落とし、議論を重ねて形にした。コロナによるとまどいも、隠さず劇中に盛り込む。劇では、緊急事態宣言が出されたことで部活ができなくなり、生徒は「学校は、ただただ、勉強するところだった」と話す。ただ、全国大会の舞台に立てることになり「胸がちくっとする」との思いも。
九月四日を、一九五七年に黒人の女子高校生が米国で初めて誕生した日として紹介する。この生徒は脅迫され、後に通学できなくなったとし、生徒役が「アメリカってやばくね?」と言うと、女性教師役は「日本も相当やばいよ。みんなもいろいろ、あるでしょ?」と問い掛ける。
部員たちからは、「演じたことで、これまで何にとらわれてきたかに気づけた」という声も聞かれた。部長の木原幸乃さん(17)は、「ルッキズム(外見至上主義)や性暴力など、嫌なこともなかったかのように生活している。身近な問題だと気付いてもらえるよう、それらを見えるようにしたい」と意気込む。
関連キーワード
<今、変化を 国際女性デー>女子の生きづらさ表現 都立千早高演劇部 福岡であす全国大会に初出場 - 東京新聞
Read More
No comments:
Post a Comment