子どもを「一人の人間」として尊重
コロナ禍真っただ中の令和三年春、長男の善之介が、スペインから帰ってきた。 伊勢丹のアートギャラリーで個展を開くためだ。 クレヨンで好き勝手に絵を描いていた長男がスペインに渡り、こんな立派な絵画を描くようになるなんて……。小さかった子どもが遠くに行ってしまったのは少し切ないけれど、やっぱりうれしい。 私には子どもが三人いる。 長女のカンナ、次女のハヅキ、長男の善之介の三人だ。私は五月生まれだったので、英語の「May」からとって、 「メイコ」という芸名を付けてもらった。同じように「神無月」に生まれたから長女はカンナ、「葉月」に生まれたから次女にはハヅキという名前を付けた。 息子は十二月生まれだったので「シワス」となるが、それはさすがに変だろう。結局、夫の名前から「善」の字をとり、「男の子だからお侍みたいな名前がいい」という私の要望を合わせて「善之介」とした。 小さい頃から意識していたのは、子どもたちを一人の人間として尊重することだった。 長女のカンナは幼稚園の頃、 「カンナのジーパンが泣いてる。ママのブラジャーも泣いてる」と言い出した。 見ると、庭に干した洗濯物からぽたぽたと雫が垂れている。 でも私は、 「あれは涙じゃなくて雫なのよ」とは言わず、 「ほんとだ。洗濯物が泣いてるね」と娘の言葉を肯定するようにした。涙ではなく雫であることには、自分で気づけばいい。
三島由紀夫の涙
その感性を生かし、カンナは作家になった。小さい頃に自分で作った詩集がまとまったときには、三島由紀夫さんに読んでもらった。 〈噴水さん、噴水さん、あなたはどうしていつも飛び上がっていて、疲れないの? カンナがお空だったら、つり革をぶら下げてあげるのに〉 この詩を読むと、三島さんはぽたぽたと涙をこぼし始めた。そしてこう言った。 「よくこんな詩が書けたね。私も今、つり革が欲しい」 三島さんが市ヶ谷で自殺したのは、その三日後のことだった。カンナは、物書きとして生きていく不思議な運命を背負っているのかもしれない。 一方、次女のハヅキはかわいい洋服や人形が大好きで、好きな色はピンクとオレンジ。しかも子どもの頃から妙な色気があって、夫のコップに「はいどうぞ」とビールをつぐ様子など実に様になっている。 ハヅキは女優になり、俳優の杉本哲太さんと結婚、二人の子どもの母親にもなった。
「18歳で家から追い出す」一男二女の子育てで、私が実践した鉄則(現代ビジネス) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース
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