10月11日は国際ガールズ・デー。「女の子だから」と教育を受けさせないなど、少女への性別や年齢による差別や社会的制約をなくそうと、国連が制定した記念日だ。そう聞くと「途上国の話」だと思いがちだが、そうだろうか。
2004年に放送が始まったアニメ「ふたりはプリキュア」は、「女の子だから」という制約を打ち破った画期的な作品だ。コンセプトは「女の子だって暴れたい!」。普通の女子中学生が「プリキュア」に変身し、協力しながらキックやパンチで敵と戦う。男性のプロデューサーは、幼いころに女の子とも変身ごっこで遊んだという。その経験から「子どもに男女差はない」「『女の子だからおしとやかにしなさい』と無理強いするのは違う」(『アニメージュ』2018年7月号掲載の対談)と語る。
性別で制約をしない気遣いはキャラクターデザインにも及ぶ。たとえばアクション場面があるので、靴はパンプスではなくブーツだ。一方、変身後のコスチュームはへそ出しやミニスカートなど、露出のあるファッショナブルないでたちである。しかしスカートが短い時はスパッツをはかせるなどして、下着を見せない工夫をしている。胸が不自然に揺れるシーンもない。
つまりプリキュアは性的視線から意図的に遠ざけられている。主な視聴者層は未就学の女児。キャラクターは自分より年上のロールモデルだ。もしそのキャラが性的に消費されてしまったら、保護者はもとより、これから羽ばたこうとする女の子の翼を折ってしまうからだろう。
現在の女子大学生は、ちょうど初代プリキュアを見た世代だ。私が授業でコンセプトを紹介すると、「当時プリキュアを見て、強くてかっこいい女性になりたいと思った」「アニメを通して固定概念がなくなるのは良いこと。自分もそうした流れに参画していきたい」という感想が出てくる。戦隊ヒーローものの「ごっこ遊び」では、ピンク役(1人だけしかいない女性キャラ)をやるしかなかったが、「プリキュア以降は好みのキャラが選べるようになった」という学生もいる。プリキュアのメッセージが若者に確実に伝わっていることが、とても頼もしい。
きら・ともこ 美術史・ジェンダー史研究者
関連キーワード
<炎上考>プリキュアは性的視線を意図的に遠ざけ、「女の子だから」という制約を打ち破った 吉良智子 - 東京新聞
Read More
No comments:
Post a Comment