某月某日、人恋しい秋なのであーる。深い秋だのォ。
今日は、来年の個展のための図録(画集みたいな豪華なもの)撮影をおなじみ、小田光カメラマンと当事務所でやった。
フランスは秋のバカンス期間中で、わが社が誇るスタッフが全員家族やパートナーさんと旅に出てパリにおらず、な、なんと父ちゃんが助手をやることに。
助手といっても、壁の絵を交換するだけなんだけれど、これが、きつかった。
小田カメラマン、職人気質が強くて、あと一枚で撮影が終わりという、その直前に、
「辻さん、この壁、ダメです。光の反射がよくありません。最高の図録にしましょう」
と言い出し、奥の壁を指さしたのだった。
そこに、釘を打って、一から全部取りなおしたい、と言い出したのであーるぬーぼー!
それがどんなに大変かというと、父ちゃんがソファの上にのぼって、
「辻さーん、その釘、もうちょっと右、あ、もっと右でーす」
の合図で、変な恰好で、釘を打つことから始まったのである。(4本も打った)
そして、その高い場所にいちいち、父ちゃんがのぼって、小田さんの指示に従い、
「ちょっと傾いています。もっと、右をあげないと、がんばって」
40枚以上もの作品の取り換えなどをやったのであーるぬーぼーぼーぼー!
小田さんは、カメラマンだから、カメラの前から動かない。
11時からはじまって、16時まで、助手父ちゃんは一人で動き回ったのだった。
汗だく、へとへとになったのだった。
「辻さん、大変でしたね、きつかったでしょ?」
撮影は最高の仕上がりになったが、父ちゃんの身体はぼろぼろまーるぼーろになったのであーる。
そこで、マッサージに行くことにした。
※ 仕事人、小田光なのであった~。でも、この壁じゃなかった。後ろにある大きな壁に釘を打った、わし・・・。
パリはエステの街である。男もエステに行く時代だ。
コロナ前、父ちゃんがたまに通っていたスパにフレデリックさんというえらく評判のいい指圧師がいて、ライブの後などに、よく通ったものだった。
サウナがあって、筋トレも出来て、極上のマッサージをうけられる。
ロンドンライブの後、体調がいま一つよくない父ちゃん、今日の小田カメラマンの助手活動によって、危険な状態になったので、4年ぶりに、フレデリックさんのところを訪ねたのであった。
しかし、フレデリックは退社し、今は女性がマッサージをやっていた。(怪しい店ではありません。怪しい店が多いフランスですが、ここは大丈夫・・・)
若い女の子で、アリシア、という子であった。25歳くらいかなぁ~。ちなみに、美人です。健康美人。
経験あるフレデリックにやって頂き、楽になりたかった父ちゃん・・・。
一瞬、悩んだのだけれど、心の広い日本人パパなのだから、経験があろうとなかろうと、ここは受けないわけにはいかない、正義の味方、と勝手に思った次第であーる。
「それでは、ムッシュ、手を洗ってきますので、この使い捨ての下着に履き替えて、毛布の中でお待ちください」
というのであーる。
アリシアちゃんに、小さな黒いものを手渡された。なんか、変だな、と思ったけれど、そういえば、フレデリックの時も、そんなだったかも、・・・。
一人になって、ガウンを脱ぎ(その前にサウナに30分入って、シャワーも浴びている)その黒いものをビニールから取り出してみたら、ぎょええええええ~。
ヒモとあそこを隠すだけの半透明の、つまり透けて見えるガーゼのようなパンティみたいな、ふんどしのような、変なものがでてきた。これ、履くんか!
これ、履く方が変態っぽい、と思った父ちゃん。むは、どうしよう・・・。息子に怒られる、と最初にあいつの顔が頭を過った昭和生まれのおやじでした。
ともかく、ここからはもう、元には戻れない。言われた通り、毛布をかぶって、待っていると、アリシアちゃんが来て、電気を消した。
ぎょええええ、暗い。
すると、ムーディーな、中東風の切ない曲が流れ出したのだった。ちゃらら~ん。
「こういう音楽、お好きですか?」
「え、あ、はい。好きです」
と答えている父ちゃん。
「じゃあ、うつぶせになって、リラックスしてください」
※ このあと、大事件が待ち受けていたのであーる。この服を全て脱ぎ捨てた、父ちゃんの運命やいかに・・・。
で、アリシアちゃん、うなじに触れたのだ。しっとりたした指先、きゃあああああ、ここから先は書けない。いや、へんなことじゃなく、切ないのであーる。
思えば、季節は秋だ。枯れ葉散る、パリの秋、・・・。
流れる中東の切ないメロディ・・・。
アリシアちゃんが、背なかをほぐしはじめると、こんな心地いいこと、今まで忘れていた、父ちゃんの目元、その奥の涙腺が、ちょちょぎれるのだった。
何や、この切ない気持ち!
ああ、癒される、と思ったのはそこまでで、その次の瞬間、今度は、ぬるっときた。
「げええええええええ」とのけぞりそうになった、父ちゃんなのであった。
つまり、オイルマッサージだったのだ。
「あの、アリシア、もしかして、スエーディッシュマッサージ?」
「はい、さっき、ご希望を英語でいくつか訊いた時、ムッシュが、イエスって」
おお、それはぼくの英語力の問題によるミステークだった。
「圧力のあるオイルのマッサージで、全身をほぐしたいですか、と訊いたら、イエス、オフコースって。おっしゃいましたが、違いましたか?」
おお、そうだったのか、知らなかった。あの英語の意味が今、やっとわかった父ちゃんなのである。
しかし、郷に入っては郷に従え、というので、ここは逆らわないことにした。☜え、受け入れたんかい!だって、今から過去には戻れないじゃん。
でも、アリシアちゃんのテクニックが凄すぎて、ぼくが酷く疲れていたので、45分は寝てしまったのである。上手だった。途中で、自分のいびきで目が覚めた父ちゃん。
「ムッシュ、はい、じゃあ、表を向いてください」
表ェ、なんだって~???
つづく。
今日も読んでくれてありがとうございます。
こういう書き方をすると、嫌らしい男、と思われるかもしれませんが、そうじゃなくて、人の手の力というのか、優しさというか、手を通して、身体に触れて貰って、思い返したら、記憶にないくらい、長く、そういう琴線に触れるような瞬間がなかったなぁ、頑張ったね、父ちゃんって、思っても仕方ないです、ですよね? ずっと独身ですから。あはは。明日から、また、前向きに頑張ろうって、思った、日本のおやじでした。アリシア、ありがとう。
さて、お知らせはあまりないです。
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