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Tuesday, April 20, 2021

欠損“を隠して生きてきた女の子たちの本音「”ありのまま“を肯定できる場所は少ない」|山形新聞 - yamagata-np.jp

 義足、義手など、障害を抱えた“欠損女子”がホールに登場するコンセプトバー『ブッシュドノエル』。5周年を迎えた同店だが、当初は「障害者を見世物にしている」などの批判の声も多かったという。しかしその裏には、健常者と分断することなく、障害を抱えた女性たちにも働く場所を…との想いがある。実際に欠損BAR『ブッシュドノエル』で働く女の子たちにインタビューし、胸に秘めた疑問、同店で働くことへの気概などを聞いた。

【写真】「右手に障害が…」人気No.1あもりさん 欠損女子たちの働く姿も!

■義手を外して仕事ができる喜び…「自己肯定感が高まった」

 欠損BAR『ブッシュドノエル』は、わかりやすく言うと“ガールズバー”。働くのは腕や脚がない女の子たちで、「欠損した部位をお客さまに自慢する可愛らしい女の子がお酒の相手をしてくれるお店があたっていいじゃないか」がコンセプトのお店だ。女の子たちは基本的に「一人でなんでもできる」そうだが、それでも欠損しているという事実だけで、健常者では思い至ることが出来ないほどに屈辱的な経験をしている子もいるという。

――実際にそういった経験はありますか?

【琴音】お野菜を切る工場や、ガールズバー、引っ越し屋さんの面接では右手が理由で落ちました(笑)。合否の連絡の電話が来なかったり、遠回しに理由をつけて「業務ができないかもしれないから」とか、「私は良いんだけどお客さまからクレームが来るかもしれないから」って。実際にバイトや社員として入社したのは、“障害者”ではなく一社員としての対応をしてくれたところばかりです。たまに腫れ物に触る様な扱いをしてくる人と出会ったりしますが、お仕事に支障はないのであんまり気にしてないです。

【ぽわん】私は以前も接客を伴う飲食店で働いていたことがありますが「長袖を着て働かなければいけない」「義手をつけなければいけない」など、お客さまの気分を害さないために…と制約は多かったです。その点、当店は欠損を最初に公表しているのでとても働きやすいです。手がないことを見せびらかして働くことが出来て、本当の自分でいられる場所です。

――『ブッシュドノエル』で働く前と後で、自身の変化を感じますか?

【ぽわん】私自身は元々、お喋りでポジティブな性格なので劇的な変化はありませんが、義手を外して行動することは増えたのが変化かもしれません。ありのままでいることを認められた気がするし、自己肯定感も高まった気がします。

――一緒に『ブッシュドノエル』をやろうと岡本さんに持ち掛けられたときの気持ちはどうでしたか?

【琴音】「欠損に特化したバー? 右手がない事がウリになる? 嘘でしょ?」と思いました。でも岡本さんのお話を聞いていくうちに、これまでネガティブだと思っていた“欠損”が一瞬にしてポジティブな発想に生かされたと感じました。

【Lisa】琴音ちゃんと番組のお仕事でご一緒して、初めて欠損バーのことを知りました。この頃は以前やっていたバンドが順調に進んでいたので、欠損バーに入るという考えはありませんでしたが、時が経ってバンド活動の雲行きが怪しくなってきたときに、ファンに会える場所を作りたいと思って、欠損バーのスタッフに応募したんです。「これで自分の世界をまた少し広げられるかも!」という期待が大きくて、不安や葛藤は皆無でした。

――Lisaさんはギタリストとお伺いしました。大変なこともあったのでは?

【Lisa】家族もみんな楽器を弾いていて、小さい頃から音楽のある環境でした。布袋寅泰さんの音楽やX JAPANのhideさんのプレイスタイルを目にし「私もこの人みたいになりたい!」と思ったのがきっかけです。当時は手がないのに弾く方法がわからなかったのですが、父が「ないものは作ればいい!」と言ってくれて、今現在も使っている義手ピックの原型となるものを作りました。ホームセンターでアクリル板やマジックテープ、太めのゴム紐を買い、アクリル板を曲げてピックの役目になるように工夫したんです。いろいろ悩んだこともありましたが、今もバンド活動は続け“自分は自分”と開き直っています。ありがちな言葉かもしれませんが、自分の努力と両親や周りのサポートがあって乗り越えられました!

■「なぜ障害があるとモデルを出来ないんだろう?」感じていた疑問から、ヌード撮影を決意

――欠損アイドルとしても活動されていますが、こちらには戸惑いはなかったですか?

【琴音】『ブッシュドノエル』の琴音として働く事には慣れたと思いますが、「自分はアイドルって言っていいのかな?」って今も思っています。ファンでいてくださる方、応援してくださっている方には失礼なのかもしれないのですが…。自分が理想としていたり、知っているアイドルの子ってキラキラしてて、可愛くって、眩しいんです。だから今は胸を張って「アイドルです!」って言えなくて。ただ、自信はなくても、自分を推してくださっている方のことを、笑顔にしたい、幸せにしたいって気持ちはあるし、「琴音を押してくれてありがとうね」っていう、感謝の気持ちは忘れないようにしたいと思っています。

――『ブッシュドノエル』人気ナンバーワン・あもりさんは、どのような気持ちでブッシュドノエルを支えていますか?

【あもり】3枚目キャラだと自負しているので「え? まさか私が!?」とあまり実感はないんですよ。好きなことを好きなようにひたすらがんばるくらいしか取り柄がなくて、欠損バーのためになにが出来るのか考えて実行しても、空回りしているような時がよくあります(笑)。逆に、お客さまが私を支えてくれているな―って思うことがよくあります。

――たとえばどんなことがありましたか?

【あもり】先日、誕生日イベントを開催していただいたんですが、お客さまが私の右手に合わせて改良したマウスの試作品を持ってきてくれたんです。マウスホイールが中央ではなく、親指の位置にあって…。私の障害や不便を知ってくれているからこそ作っていただけたと思うので、本当に支えられているなって。ほかにも、YouTube配信用に使用しなくなったiPadを譲ってくださったり、「A4の大きさが分からない」とつぶやいたのを見てくださったお客さまが実物を持参し教えてくれたり。みんなが私を支えてくれているように、私も自信を持って「欠損バーを支えている!」と言えるように努力します!

――こみみさんはSNSで人気と伺いました。どんなことを発信しているんでしょうか?

【こみみ】私のSNSは、“義足が主役”なんです。義足の可愛さやおしゃれさがアピールできる写真を日々投稿しています。義足ユーザーならではの困っていることや感じたこと、小話なども発信して、義足に馴染みのない人にも身近に感じてもらうきっかけとなったらいいなと思っています。モノ作りが好きなので、休みの日には義足をかわいくするための装飾品を作ったりしています。

――『ブッシュドノエル』のキャラクターデザインも担当されているようですね。

【こみみ】正直言うと「私の絵でいいのかな…」という気持ちもありますが、“その子らしさ”が出るように思いを込めて描きました。注目してもらえたらうれしいです(笑)。欠損バーの女の子たちはみんな個性があってかわいいので、ミニキャラにして描くのはすごく楽しかったし、気に入っています。大事な役目ですし、描かせてもらえてとても光栄です!

――芸術的で個性的なメンバーがたくさんそろう『ブッシュドノエル』の女の子たちですが、ぽわんさんはヌード写真集を出すとお伺いしました。

【ぽわん】撮影会モデルの面接を受けて合格しても、後日障害を理由に断られてしまうことが多々ありました。「障害さえなければ…」と落ち込むこともありましたが、「なぜ障害があるとモデルを出来ないんだろう?」とも感じていました。なので、写真集の話が来たときには即決でした。

――抵抗はなかったですか?

【ぽわん】なかったです。むしろ最初はヌードのお話じゃなかったんですが、「キャッチーでインパクトがある!」と思い、自分から提案しました。ありのままの私をどのくらいの方が興味を持って見てみたいと感じていただけるのか楽しみです。一方で、クラウドファンディングなので目標達成できるかどうか不安でもあります。まだボディラインが保たれているうちでないと「ヌードを撮って残そう」とは思えない気がするので、ご支援ぜひよろしくお願いいたします! 素敵な写真集になるよう自分磨きも含めて頑張ります!

■『ブッシュドノエル』は欠損している自分を恥ずかしがらなくていいと教えてくれた場所

――後輩や同僚、オーナーさんたちとはどんな関係ですか?

【あもり】たくさん心配をかけていましたね。いや、未だに心配ばかりかけていますけど(笑)。最初の頃は、うまく自分の気持ちが伝えられず、不貞腐れて深夜に新宿から東京駅に泣きながら歩いて帰ろうとしたりして。今思うと、ゾっとしますが、運営さんが無事引き戻してくれました。そんなとんでもない私ですが、『ブッシュドノエル』はありのままを受け入れてくれて、チャンスをくれました。

――内面的な意味でも、ありのままでいられたんですね。

【あもり】そうですね。だから『ブッシュドノエル』のために…と努力し続けられているんだと思います。バーのスタッフやアイドル活動もそうですが、普通じゃなかなかできないお仕事もたくさんくださいましたし、女の子たちも個性があって勉強になることばかりで。考え方や意志の強さなんかも含め、尊敬できるメンバーに囲まれて、「ここで働けて幸せだな~」って思えます。これからもお互い切磋琢磨していきたいですね。

――働く女の子たちにとっての欠損バーという場所はどんな場所でしょうか?

【琴音】一言でいうと、「欠損している自分を恥ずかしがらなくてもいい場所」ですね。実生活でも嫌なことがすごく多いわけじゃないですけど、ここまでありのままでいられる場所は、そんなに多くないので。それと、ファンの方と交流のできる心地いい居場所。これからもこの場所で、みんなで過ごせたらいいなと思います。

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