珍しくDNAが残存、赤ちゃんも「ひとりの人間として認められていた」と研究者
イタリアの洞窟で幼い子どもの骨が見つかり、分析の結果、ヨーロッパで埋葬された女の子の赤ちゃんとしては、最も古いものであることが明らかになった。古代の社会において、赤ちゃんがどのような存在だったのか、特に女の子の赤ちゃんの「人格」はどう扱われていたのかを知る手がかりになりそうだ。論文は12月14日付で学術誌「Scientific Reports」に発表された。 ギャラリー:昔の人はこんな顔だった、考古学者が超リアルに復元 写真9点 女の子は、この地域を流れる川の名にちなんで「ニーブ」と名付けられた。1万年あまり前に、生後わずか40~50日で死亡した。死因は不明で、発見されたのは布に包まれたわずかばかりの小さな骨と貝殻のビーズだけだった。すぐそばで出土したワシミミズクのかぎ爪は、供え物として置かれたものと思われる。 古代の子どもの骨が発見されることはめったにない。新生児の骨となればなおさらだ。子どもの骨は小さくてもろいため、数千年もの間、形を保つことができない。加えて、子どもの遺骨が見つかったとしても、骨に含まれたDNAが劣化しているため、普通は性別を判別できない。その点、ニーブの遺骨は例外だった。1万年以上も地中に埋もれながら、分析ができるだけのDNAが含まれていたのだ。 「この時代、つまり1万1000年から1万年前の墓は非常に少ないです」。しかもここまで古いと、使用できるDNAが残っている骨はほとんどない。「ほぼ何もない空白の期間なのです」と、論文の筆頭著者で、米コロラド大学デンバー校の古人類学・考古学准教授であるジェイミー・ホジキンス氏は言う。氏は、ナショナル ジオグラフィックのエクスプローラー(探究者)でもある。
赤ちゃんはどのような存在だったのか
DNAが残っていることは重要だ。そのおかげで、ニーブは女の子と判明した。民族誌学的には、幼い子どもの人間性を完全には認めない文化は多いとされる。だが、丁寧な埋葬は、女の赤ちゃん、そして恐らくは男の赤ちゃんもこの集団社会の中で「人格」を持ち、生まれた時から社会の一員として認められていたことを示していると、研究者たちは指摘する。 「小さな女の子の赤ちゃんまでも、社会のなかでひとりの人間として認められていたことを示しています」と話すのは、論文の共著者で、ホジキンス氏の夫でもあるコロラド大学デンバー校の古人類学者ケイリー・オール氏だ。 古代の子どもの遺骨がこれまでほとんど見つかっていないこともあって、赤ちゃんがいつごろから個人とみなされていたのか、また女児が男児と同じように扱われていたかを知るのは難しい。しかし、ドイツのイエナにあるマックス・プランク人類史科学研究所のマイケル・ペトラグリア氏も、研究チームの解釈は妥当だと考えている。 「私も、男女の赤ちゃんが平等に扱われていたことを示す証拠だと思います。これは、現代の男女平等の狩猟採集社会とも共通しています」。ペトラグリア氏は今回の研究には参加していないが、アフリカで発見された、ニーブよりもさらに古い年代の子どもの遺骨を研究した経験を持つ。こちらは、人類がヨーロッパに到達するよりもはるか以前の7万8000年前に埋葬されたものだった。 米国アラスカ州タナナバレーでも、ニーブと同時期の乳児の墓が発見されている。約1万1500年前にニーブとほぼ同じ月齢で死亡し、DNA分析により女の子だったことが確認されている。そして、こちらもやはり丁寧に埋葬され、同じように供え物が置かれていた。 ホジキンス氏とオール氏はこれに関して論文の中で次のように書いている。「女児も含めた乳幼児をひとつの人格として認める考え方は、どの古代文化にも共通して深く根差していたであろうことを示している。あるいは、地球上の異なる集団の間でほぼ同時期に発生したのだろう」
1万年前の女の赤ちゃんの墓を発見、欧州最古、手厚く埋葬(ナショナル ジオグラフィック日本版) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース
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