(2022年10月13日付 東京新聞朝刊)
月経が始まったり、体形に変化が現れたりと思春期は女の子にとって戸惑いも多い時期だ。特に発達障害のある子の中には、変化にうまく対応できないケースも見られる。専門家は、特性に応じて具体的なアドバイスを伝えることや、当事者同士で気軽に話せる場の必要性を指摘する。
「最初のうちは仕方がないけれど、何度も繰り返すので困ってしまった」。東京都内で発達障害のある中学1年生の娘(13)を育てる女性(46)はこう話す。初経は小学5年の夏ごろ。生理用品の使い方などを一通り教えたが、経血量の多い日に便利な羽根付きタイプのナプキンがうまく着けられなかったり、まだ月経が続いているのに「もう終わったと思った」と下着や洋服を汚してしまったりすることがあった。「家庭だけでは、どう対処していいか分からないこともある」
ナプキンの素材が気になって着けるのを嫌がったり、手先が不器用でうまく扱えなかったりする場合も。布ナプキンや、吸水力が高くナプキンなしで使える生理用ショーツなど、その子に合う製品を探し当てると解決することがある。「説明だけでなく、保護者や支援者が一緒にやってみて」
発達障害の子どもの支援に詳しく、養護教諭や看護師でもある岐阜大医学教育開発研究センター講師の川上ちひろさんは、月経を巡る失敗について「発達障害の子に見られる感覚過敏が影響していることがある」と指摘する。
見通しを持ったり、融通を利かせたりするのが苦手な特性があると、経血量に応じたナプキンの種類の使い分けや、適切なタイミングでの取り換えが難しいこともある。「こういう場合はこれを使うとよい、と具体的なアドバイスを」と川上さん。視覚的に理解しやすいイラストや動画なども活用するとよいという。
川上さんは発達障害の女の子同士が集まって話せるプログラムなども設けてきた。ブラジャーの着用を拒んでいた子が、同世代の子から「私も着けているよ」と聞き、スムーズに着けられるようになったこともあったという。「家庭でどう伝えたらいいか悩むようなことが、当事者同士の交流で解決することもある。オープンに話ができる場は大切だ」と話す。
発達障害の女の子が思春期になりやすい二次的症状
- 自律神経失調症(起きられない、立ちくらみ)
- 不安や脅迫症状
- 過度に服装を気にする、過度に無頓着
- 摂食障害
- 不登校・ひきこもり
※宮尾益知さん監修「女の子の発達障害」から
女子は目立つ行動が少なく、発達障害の診断が遅くなることも
「どんぐり発達クリニック」(東京)の宮尾益知院長によると、体に大きな変化がある思春期は、発達障害の子にとって不安が大きくなりやすい時期という。
女子の場合は男子に比べ、多動など目立つ行動が少ないことなどから診断が思春期ごろまでずれこむことも多い。「思春期は周囲と違っていることを受け入れたくない、欠点を隠したいという気持ちが強く、受診したがらないこともある」と宮尾さん。適切な対応がないために「大人に向かう当たり前の変化」と受け止められず、自律神経失調症など二次的な不調が出ることも少なくない。
思春期の女子は「共感」をベースにした「ガールズトーク」で仲間意識を育む傾向がある。相手の考えや気持ちを察することが苦手な特性のため、集団に入れず悩む発達障害の子も多いという。「分からないことや困った時、どうしたらいいかを聞ける相手がいることが大事」と宮尾さん。「発達障害の女の子がしんどさを感じる背景には、女の子が男の子以上に、コミュニケーションや気遣いといった社会性を求められがちなこともあり、変えていく必要がある」と指摘する。
発達障害のある女の子の「月経」の悩み 特性に応じたケアが必要です アドバイスは具体的に 当事者同士で話せる場を - 東京すくすく
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